海にまつわる話 その2
オヤジが泳ぐ姿を、私は見たことがありません。
子供たちが小さい頃、レジャー施設の屋外プールに何度か行きました。
人気の「流れるプール」では、息子の乗った浮き輪につかまって、ゆた~っと一緒に流れます。バタ足などしません。ゆた~っと流れに身を任せます。
息子が浮き輪を手放すと、すかさずそれをゲットして、浮き輪の上に「大の字」乗りをします。浮き輪のあなにおしりを入れて、両手両足を上に出して浮かぶアノ乗り方。 そしてまた、ゆた~っと流れます。
( こんな中年男性、他にいない )
「おとうさん、浮き輪貸してー!」と息子が言っても、
「まだまだ」「もう少し」と、なかなか譲りません。
市民プールは、25メートルプールを往復するルールです。
オヤジは端っこに設けられた水中ウォーキングコースを歩きます。ゆっくり、ゆっくり。まったり、まったり。老齢の方や女性にまぎれて・・・。
そんなこんなで、オヤジが泳ぐ姿を、私は見たことがありません。
オヤジ、泳げるのか?
それは永遠の謎。
今回は「海にまつわる話 その2」です。
* * *
長男が5歳、次男が3歳の夏。
私は妊娠5ヶ月で、ちょっぴりお腹が膨らんでいました。
オヤジが平日に休暇を取ったので、海へ遊びに行くことに ♪
少し風があるせいか、人の少ない海岸でした。
わが家以外に遊んでいるのは、ひと組、ふた組くらい。
以前、砂浜で遊んだことはありましたが、水着になって海に入るのは初めて。
長男と次男にとって今回が初めての海水浴です。
私は妊婦服を着ていたので、波打ち際から少し離れて3人の様子を見守っていました。
ジャブジャブ、波に立ち向かう長男。
スコップ片手に、砂をほったり水をすくったりしている次男。
二人とも嬉しそう。楽しそう。
「おとうさん、ちょっと歩いて来るから、
子供たちをお願いね。」
「分かってるよ。」
10分ほど海岸を歩いた。
そして戻って来た。
( あれ?)
( 次男が一人になってる?)
( ん?)
( んんん?)
よく見ると、次男がさっきより深いところにいる。
私は駆け寄った。
波が打ち寄せて引く度に、
じりっ、じりっ、
次男が引きずられている。
( や、ヤバイ!!!)
「◯◯、こっちにおいで!」
遊びに夢中で振り向かない!
「◯◯!」
( ああ、また波が!!!)
私は猛ダッシュで海の中へ。
次男を抱きかかえ、
砂浜に走った。
危ないところだった。
次の波で持って行かれるところだった。
スカートは、ずぶ濡れ。
オヤジはいったいどこだーーーー!
( ・・・・・・!?!?!? )
オヤジは、
50メートルほど先の海の中で、
腰まで浸かり、
腕いっぱいに集めた波を、
太陽に向かって、ちりばめていた。
何度も何度も、
繰り返し、繰り返し、
まるで、海に始めて来たこどものように、
・・・はしゃいでいた。
* * *
しばらくして戻って来たオヤジに、言った。
「ちゃんと見てて、って言ったよね?
◯◯、
海に引き込まれそうになったんだよ!」
「あー、悪い、悪い。」
オヤジは悪びれる様子もなく、さらっと答えた。
またしても、
目が輝いていた・・・
注 : 絵がヘタクソでごめんなさい。
今日のひと言
あなたの旦那様が、子供の安全を守れる人でありますように・・・