海にまつわる話 その1
私は九州の内陸部で生まれ育ちました。ド田舎です。川で遊んだ記憶はたくさんあるのですが、「海」の記憶はほんのわずか。
小学1年生の時、地域のバス遠足で海に行ったことがあります。川で泳ぐのとは勝手がまったく違って、波の動きに体が踊らされ、とても怖く感じたことを覚えています。
もう一つの記憶は、父に、「海釣り」に連れて行ってもらったこと。たった一度だったけど、小さな魚が何匹も釣れて、とても嬉しかったことを覚えています。
今回は「海」にまつわるエピソードです。
* * *
数年前のこと。家族そろってドライブにでかけた。
その道中で、私は生まれて初めて本物の「海釣り公園」を見かけた。
その存在は知っていたが、ナマで見るのは初めて。
「おとうさん、
帰りでいいからあそこに寄ってみようよ。
私、海釣り公園を見るの初めてなんだ!」
「いいよ~。」
ということで、私も子供たちも、初めての海釣り公園にドキドキワクワク ♪
初めに釣り竿を借りて、エサを買った。
それから桟橋というのか、それを渡り、
まるで海の中に浮かんでいるような、
「釣り台」と呼ばれる場所に到着。
「釣り台」は当然ながら海にむき出し!
( こ、こわい。)
怖いのだけど、
おしりがムズムズするのだけど、
やはりワクワク。
エサをまいて、釣り糸を垂らし、
ああ、なんて楽しいのぉぉぉ!
( おしりはムズムズ )
この日は「潮」が良くないということで、周りの人達も、ほとんど釣れていない。私たちも、とうとう最後まで、お魚さんに出会うことはなかった。
「お魚は釣れなかったけど、
楽しかったね〜!」
大満足の体験だった。
* * *
次の日、オヤジが高揚した顔で言う。
「オレ、釣りを趣味にしよっかな~」
と。
昨日の海釣り公園が、オヤジも楽しかったらしい。
「いいんじゃない?
おとうさん、趣味ないし。」
私も賛成してみた。
「そうか。
よし、
じゃあ、
早速、
釣り竿を買いに行ってくる!」
「それはやめてください。」
「えっ? なんで?」
「釣りの道具ってすごく高いんだよ。初めは借りるところから始めてよ。」
「ええーっ! それじゃあ気分があがらないよ。」
「せめて一回目だけは、借りてやってみて。
それから徐々に考えようよ。」
「ええーー。」
( 納得してないな、オヤジ )
・・・しかし、
うちの物置には、かつてオヤジがやりたいと言った、
キャンプ用の大きなテントがねむっている。
一度も使われることのなかった、大きな、立派な、テントが。
傘立ての奥には、子供と野球をするんだ、とオヤジが買ってきた、
木製の、立派なバットが、今もじっとたたずんでいる。
グローブも、バドミントンも、あれも、これも!
どれもこれも、ほこりかぶってるんだよーーーー!!!
予想通り、その後オヤジは釣りになど行っていない。
「釣りは?」とか、
「あそこに中古の釣り具屋さんがあるよ。」とか、
何度か言ってみたが、
オヤジはモソモソッと何かつぶやくだけだった。
まあ、行かないよね。経験上。
今日のひと言
あなたの旦那様が、楽しい趣味を持っていらっしゃいますように・・・