地図事件
こんにちは。
今回の話は、お出かけ編です。
外に出るのが好きらしいオヤジは、ちょくちょく地図を眺めています。
昔ながらの本の地図。
今はスマホが普及して、パッと開けば地図が出てきますが、オヤジはやっぱり本の地図を好みます。
実は私も、この気持ちは分かります。
若い時から長いこと本の地図を頼りにあちこち出かけていましたから、頭の中がそれに慣れてしまっている。スマホの地図は方角が動かせる分、たまに混乱してしまいます。
たぶん、そういうことで、オヤジはちょくちょく? 頻繁にかな? 本の地図を眺めています。
* * *
これはまだ、スマホが無かったころの話。
車に、ひと昔前のカーナビはついていたが、全く使いこなせていなかった。
ある日、オヤジの提案で、熊本県のどこそかへドライブに行くことに。
出発まで、オヤジは地図を何度も見ながら、ぶつぶつ言っていた。
「はは~ん、この道をこう行って、
こう行けばいいんだな。」
「なるほどな。」
「よしよし、分かったぞ。」
こんなふうに。
言い忘れていたが、オヤジはけっこう道に迷う。
「おとうさん、大丈夫? 行けそう?」
「ああ、大丈夫だ。道はバッチリ覚えたから、任せとけ。」
・・・不安だ。
いざ、出発。
オヤジは調子よく運転を開始。
高速道路をビュンビュン飛ばす。
歌を口ずさみながら。
オヤジは流行りの曲を聞かない。
車の中で、
80年代黄金ポップスか、
憧れのYAZAWA様の曲をかけたがる。
これには少々閉口する。
子どもたちも黙る。
頼む、一人の時にだけ、ガンガンやってくれ。
インターを下りてしばらくすると、
今回もまた、雲行きが怪しくなってきた。
「あれっ? こっちだよな?」
妙な運転になってきたぞ。
またしばらくして、
「ん? おかしいな。」
( ・・・ぬぬっ? )
「おとうさん、ここ、さっきも通ったよ。」
「そんなわけないよ。」
「ほら、あのお店、さっきも通ったよ。」
「間違えたかなぁ。」
( 気づくの遅っ・・・ )
オヤジは車を止め、例の地図を取り出した。
しかし、どうやら分からないらしい。
「おとうさん、誰かに聞いてみようよ。」
「ちょっと待て、今地図見てるから。」
ねばるオヤジ。
「ほら、あそこに人がいるよ。
聞いてみて!」
車が動き出した。
ついに観念してくれたようだ。
地元のおじさんらしき人のそばに、
車を寄せた。
ビーーーーーン
こっちを開けるんかーーーーーい!!!
私に聞けってかーーーーー!!!
オヤジは助手席の窓を開けたのだった。
* * *
オヤジは人に聞かない。尋ねない。
迷ったら、私に希望を託す・・・
今日のひと言
あなたの旦那様が、素直に道を尋ねる人でありますように・・・